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【奥の細道】 脚本No.15 教秀 作

(「蛙合」出版2ヶ月前、芭蕉庵にて)

芭蕉『1番左「古池や蛙飛んだる水の音」のわたしの詠んだ句を直そうと思うんだがね。』

其角『たしか、宗匠さま、あのとき、蛙とくれば、山吹と決まっておりますよと言いました。それで、わたくしでありましたら、「山吹や蛙飛んだる水の音」とします。そうしますと、青々とした池が想像されます。』

曽良『わたしは、「古池や」の方が、芭蕉庵の趣つまり侘(わび)しさを現し、適切であると思います。』

宗波『わたしは、禅宗のはしくれとして、曽良どののご意見に同感であります。』

仙北『う〜む、これは難しい。どちらの言い分もいち理あり。』

芭蕉『わたしはね、推敲を重ねた結果、「古池や蛙飛びこむ水の音」にすることに決めました。ことばのひびきが自然であり、何よりいちばんわたしの心にしっくりとくるからです。』

仙北『さすが、宗匠さま、ちょっとした言葉のちがいがこんなにまで情感を変えるなんて信じられません。』

宗波『宗匠さま、これは巻頭をかざる名句になること、必定でござる。』

曽良『この句を聞けば聞くほど、音で静けさを表現した句が世の中にあっただうかという革新的疑問がわいてまいります。』

芭蕉『わたしは、其角の言う句もよく理解できます。なぜなら、其角はわしよりもずっと若いし生活を取り囲む環境にも恵まれているから、山吹が合っているのですよ。』

其角『いえいえ、そんな、宗匠さまよりもったいないお言葉、恐れ入ります。』

芭蕉『みなさん、当たり前のことですが、人はそれぞれ顔が違うように、個性や才能、生きる環境が違うのです。そのため、表現する句も当然違って良いのです。だから、其角にとって山吹が合っているのですよ。』

仙北『わかりました。早速、梅風殿にお知らせし、本の草稿文を訂正するように致します。』

芭蕉『もし、この本ができたら、来年夏頃、いちばんお世話になった鹿島の根本寺住職の仏頂禅師に届けたいと思っているのですが、誰か供をしてくれませぬか。』宗波『わたくしで良ければ、お供いたします。』

曽良『宗匠様、ついでに鹿島神宮詣とシャレこみますか。』芭蕉『これで、決まりですね。ふたりとも、心づもりしておいてくださいよ。』

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