【奥の細道】 脚本No.17 教秀 作
(元禄2年1689年冬の時期 芭蕉庵にて)
芭蕉『今度の旅は、命がけの旅となります。つまり、客死するやもしれません。それで、そちに頼みがあるんだが、同伴してもらえぬか。今回は、わたしの最後の旅となる覚悟で臨みたいのです。これまでの「笈の小文」「更科紀行」を超えるものを作りたいのです。』
曽良『そこまで宗匠さまのお気持ちを聞いて、断るようでしたら、わたしの俳諧にかけた姿勢が問われます。ぜひ、喜んでお供いたします。』
芭蕉『では、桜の時期、出立いたしましょう。行く先は、白河の関を越えて、松島を目指し、山形を抜け、日本海を回って、大垣に行く行程としましょう。』
曽良『わかりました。行程については、宗波どのはお寺と宿舎等に詳しいので、ご相談して、彼の智慧を得るようにいたします。もちろん、神社のことでしたら、わたしに任せてください。』
芭蕉『今回の旅は、西行さま500回忌の尊い記念の旅となるものでもあります。よって、西行さまを偲びながら、旧所名跡を訪ね、そこで感じた我が想いを紀行文に書きながら自然に句にまとめあげるといった壮大なものとする予定です。ですから、前もって、門人たちには計画を話し、事前に知り合いのつてを頼ろうかと考えております。ひとりでは何もできませぬが、多くの智慧があれば、困難な旅でも救いは必ずありますので。』
曽良『よくわかりました。次回、ここでの句会の際、前もって、門人の方々にお話し、つてを頼って、宿泊できるめぼしい所を書状にて確保しておきたいと存じます。また、観るべき旧所名跡の場所も、確認しておきたいと存じます。』
芭蕉『わたしからも、いろいろな人を頼って、できるだけ多くの門人に書状をしたため、協力を求めるようにいたしておきます。そちの方も、どんどん計画を進めてくだされ。今回は、意図した計画は伏せ、自然な旅を全面に押し出し、まとめていきたいのです。以前、感じていた無為自然を中心にしたいのです。』
(門人たち、地図を見ながら、旅の計画を練っている)
宗波『今回の旅には、残念ながら、お供できませねが、通るであろうお寺の方には、書状を通して、宿泊を含め、ご協力を得るように手配致しましたので、ご安心ください。』
仙北『わたくしめは、資金面でのご協力を得るべく、江戸中をかけずり回りまして、おふたかたの旅費を書き集めて回りました。さらに、素堂どのと杉風どのにも、大変お力添えをいただきました。』
杉風『わたしは、江戸の商い関係でクマその有力者を当たってみました。』
仙北『今回の旅は、表向きはおふたりだけの旅でありますが、事前の我々の綿密なる計画意図は内密にし、伏せておきます。ですから、お二人は、我々の身代わりでもあり、旅先からの書状を受け、いつでも心は繋がっているわけです。』
杉風『いうなれば、我々も、おふたりとともに句をとおして、旅をしておるようなものですな。これは、とても不思議な感じですなあ。』(一同 笑い)