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【奥の細道】 脚本No.7 教秀 作

(日本橋教室の座敷、門下生が桃青を取り囲むシーン)

嵐雪『宗匠さまが日本橋を離れ、深川へ行かれるというのは、本当ですか。』

ト石(ぼくせき)『なぜ、このような最高の環境から、あのような辺鄙な片田舎へ行かれるのですか』

き角『せっかく苦労して、わたしたちの独吟二十歌仙を刊行したというのに。これからではありませんか。』

杉風『先生もお辛いことがあってのご決断なんですよ。』

桃青『その先は、わたしの口から皆に話します。実は、故郷よりつれて参った甥の桃印がわたしの世話係の貞尼と駆け落ちし、行方をくらましてしまった。伊賀国のおとりしまりで5年ごとの帰国がならぬと兄たち親類縁者に罪が及んでしまいます。その為、わたしは早速帰郷し、彼になり代わり、死亡報告をする手はずです。』

『わたしが期待していた桃印。今頃、この空のどこかで生きていることであろう。』

『わたしは名声と同時に、みじかなものを失うという二つのことを味わった。そんなとき、今までのことを落ち着いてふりかえる機会を得ました。』

『江戸に来て10数年、一番大事なことに気がついたのです。』

嵐雪『して、一番大事なこととは。』

桃青『それは、亡き良忠公の意志を継ぐことです。わたしは、もう一度原点に立ち返り、自らの俳諧を再構築してみたいという想いがふつふつとわきあがって来たのです。』

き角『そんなら、ここ日本橋でも十分お望みは叶うではありませんか。』

(しばらく沈黙)

桃青『き角どののいうとおり。でも、わたしの心のことばが将来約束された地を去り、新しい土地で新境地を開拓せよと申しているのです。わたしはそのことばに素直に従うことにいたしました。』

杉風『宗匠さまのその心境を以前おうかがいし、深川にあるわたしが所有する生簀の番小屋を草庵にするようご紹介したのであります。』(全員ため息)

桃青『みんな、まるでわたしが亡くなったような感じではないか。わたしはこれこのとおり生きていますよ。会いたい時は、いつでも来てください。新天地で頑張りますわい。』

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