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【奥の細道】 脚本No.10 教秀 作

(磐城平藩主・内藤義概の江戸屋敷)

内藤義概『お久しぶりでござったな。』

芭蕉『内藤殿には、以前から、お目にとめていただきまして、ありがたき幸せに存じます。』

内藤義概『堅苦しい挨拶は抜きじゃ。して、野ざらし紀行という句集を出したということを聞き、是非所望したいと使いをやったところであったが、貴殿が直々に訪れるとは恐れ入り申した。』

芭蕉『江戸一番俳諧の収集において、内藤殿の右に出るものはおりませぬ。そのことはこの芭蕉重々承知しておるつもりです。』

内藤義概『そちの口から、冒頭の句を詠んてくれぬか。』

芭蕉『では、野ざらしに心に風のしむ身哉』

(客死覚悟の旅、秋風が吹き過ぎ、心まで身にしみる)

(義概、それを聞き、じっと下を向く)

芭蕉『殿、どうかなされましたか。』

内藤義概『いや、何でもない。ただ、野ざらしが心に響いただけじゃ。』

(しばらく、沈黙が続く。外のトンビの声が聞こえる。)

内藤義概『帰りに今回の本代とわずかな支援金を家来より受け取ってくだされ。また、新しい作ができたら、所望したいので、頼みますぞ。』

芭蕉『ははぁ、承知つかまつりました。』

(帰りぎわの門で、俳諧仲間の山口素堂とばったり会う)

素堂『これは、お久しい、芭蕉どのではござらぬか。』

芭蕉『これは、これは、素堂どの、その折はいろいろとお世話になり申した。』

素堂『こちらには、何用で。』

芭蕉『旅の句集ができたので、報告かたがた、参った次第でございます。』

素堂『芭蕉どの、ちょっと、こちらへ。内藤殿の様子、変でありましたろう。』

芭蕉『何か、ただならぬ悲しい雰囲気を感じ申した。』

素堂『さも、ありなん。実は、噂によると国許で小姓騒動が起きましてな、10人ほど切腹の命を下したそうでございますよ。以前のはぶりは影を潜め、自らの著作にふけっているとのことであります。まぁ、どこの藩でも、内輪揉めは世の常ではございますがなぁ。』

芭蕉『そんな世の中だからこそ、俳諧が救いとなるのですよ。』

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