【奥の細道】 脚本No.12 教秀 作
仙北『5番 左右の詠み手、お願い申す。』
5番左「蓑(みの)うりが去年(こぞ)より見たる蛙かな」(李下)右「一畔(ひとはぜ)は しばし鳴き止む蛙かな」(去来)
仙北『批評のある方、挙手にて。そら殿。』
曾良『左は早苗の雨をあてにする蓑売りはわかるが、今ひとつ訴えるものを感じません。右は情景がすうっと入ってきます。』
仙北『皆の投票は右多く、右勝ちと致します。次、どうぞ。』
6番左「鈴絶えて蛙に休む馬屋かな」(友五)右「足ありと 牛に踏まれぬ蛙かな」(琪樹)
流水『どちらも、蛙目線か〜。』
仙北『選票は同数、よって引き分け 持でござる。次。』
7番左「僧いづく入相(いりあい)の蛙また寂し」(朱絃)右「細道や いづれの草に入(い)る蛙」(紅林)
友五『左は夕暮れどきが目に浮かび、さびを感じ、良い句ですなあ。』
仙北『選票は右まさりました。よって右、勝ちと致します。次どうぞ。』
8番左「夕影(ゆうかげ)や 筑波に雲を呼ぶ蛙」(芳重)右「曙(あけぼの)の 念仏はじむる蛙かな」(扇雪)
孤屋『左は雄大な景色、右は鳴き声を念仏に変えたところが実に面白い。』
仙北『選票を告げます。右多し。よって右、勝ちと致します。次へ。』
9番左「夕月夜(ゆうづきよ)あぜに身をほす蛙かな」(琴風)右「飛ぶ蛙 猫や追いゆく 小野の奥」(水友)
破傘『右は飛ぶ瞬間をとらえておりますが、少々やりすぎの感が、、、』
仙北『選票の結果、左勝ちと致します。次 どうぞ。』
10番左「あまだれの音も わずらう蛙かな」(徒南)右「哀れにも かえるご つたう筧(かけい)かな」(枳風)
筧(かけい)=地上にかけ渡して水を導く、竹や木の樋 (とい)
ト宅『どちらかと言われれば、右が多少まさるかな〜』
仙北『選票の結果をお知らせします、右勝ちとなりました。ここまで、ちょうど半分まできましたので、ひと息入れます。お茶とお菓子を配りますので、めいめい、ご協力ください。30分後、またこの席にお集まりいただきまして、再開致します。どうぞごゆるりと、おやすみくだされ。』